こんなところでこんなことする奴、初めて見た。
革のシートに跨って、正しくはそこに座る奴を跨いで、上下に揺すられてるのは悪夢だ。
「あ、あぁっ、や、あ、うん、はぁ…っ!…」
鼻にかかったあ行やあ列の音を出し続けてるのも最低にナイトメアだが、真横にあいた窓が、どう見ても真っ昼間な真っ青の空だというのも最悪だ。
しかも常に流れている。
青い空、白い雲といえば普通は上を見上げるものなのに、なんの因果か(その因果が突いて揺すっているのだけども)綱吉は真横に見てるわけであって。
つまり今いるのは非常に高い空の上だったりして。
移動し続けているのは、これが飛行機というものだからだ。
文字通り、遠い目になる。
それを、すぐに見開いた。一杯に。
「ァ―――!」
景色に逸れた視線を許さない腕が、腰を高くさせて引きずり落としたためだった。一瞬真っ白になった綱吉の頭とは関係なく、喉が艶やかな高音を出す。
ちょっとでも楽になりたくて、背を丸めるように上体を倒した。
狼藉を働く男に、できるかぎり重みを預ける。嘆かわしい。繋がった箇所がたてる音のこの卑猥さ!
綱吉は歯軋りしてなけなしの握力をしぼった。
鋼のような感触の上腕を思いきり掴む。爪まで立ててやってるのに、男に堪えた様子はない。
もっと伸ばしておけば良かった。
憤激をこめてぐりぐり握ると、笑うような空気の動きがある。
バキャロー誤解すんなしがみついてんじゃないよ。
悪態の代わりに火が吹き出た。ぎょっとした。いつからそんな体質にまで。
と思ったら、ただの息だった。肺が熱いが、ごしごし額をすりつけているシャツが燃えあがるような椿事は起きてくれなかった。
つまんない。
泰然と鎖骨を包む布は綱吉の汗に濡れているのに、お高いらしくて型崩れもない。
ひとの下肢を剥いておいて、自分はジッパー下げただけ。無礼なケダモノだった。お互い間抜けな格好であるのに変わりは無いのだけど。
ケチ。
それにしても熱い。
吸いこむ息が焼けるようで、吸っても吸っても楽にならない。呼吸が。
行きつ戻りつというか、思考がマトモじゃなくなってきている。激しい注挿。ごしごしがごつごつになる。
鎖骨は鍛えられないって云う。激しく頭突きしたら折れるかな、折れればいいのに――判ってる、こっちの脳震盪の確率のが高い――
「おい」
大きくて節くれだった手が、伏せた頭を剥がした。
「起こしてろ。顔が見えねえ」
「夢でも見てろ痴漢…!!」
反論した口があむっと噛まれた。肉厚の生物が口腔で暴れて、声と息と舌を狩る。
おかしな痺れがなだれこむ。完全な麻痺ならまだマシだ。
喉の奥から延髄へ、こめかみへ、尾骨から腰骨に広がって無意識に腰が揺れる。収縮した入り口がぐちゅりと鳴いた。まだ暴れる。ぬめった舌。
= = ✈