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 華奢といえば聞こえはいいが、貧弱な躯だった。
 片手で扱える重みを這いつくばらせ、逃げる腰を押さえる。
 割け入る狼藉に上がる、くぐもった声。
 ついた腕に筋が浮く。限界まで拳を握りこんでいる為だ。全身が、拒んでいる。
 顔の前に手のひらを回すと、読みにたがわず噛み締められた唇が触れた。
 頤を締めつけてこじ開けた口に指を突きいれる。噛ませないやり方は心得たものだった。
 舌を圧せば、んく、と苦しげに喉が鳴った。
 濡れた音をさせて指でかき混ぜ、つかんだ腰骨をスライドさせる。
 肉づきの薄い背中が引きつる。喉が反る。
 悶えるように身をよじるのは、これで抵抗のつもりだ。
 何とか弱く無力であることか。
 支えなければ崩れる背に添うように上体を倒した。
「…ンゥッ…!!」
 深くなる結合と。そのものが凶器であるような、男のしなやかな筋肉の重みと。
 両方で追いつめられ、遠ざかろうとにじるあがきが消える。
「―――フン…」
 男がわらうと、組み敷いた背筋に震えが走った。
 感じているのか怯えているのか。どちらにせよ生かす殺すは己に。
 上の口から濡れた指を引き抜く。存分に唾液をからめ首から鎖骨、小さくも立ちあがる尖りを辿らせ、感覚を断ちきるように下腹で離した。
 無意識の期待をかわされ切望にわななく肌へと指をたてる。食いこむほど。
「イ…ァッ…」
 虐められる神経に、いっぱいに押しひらかれた箇所がうごめく。なりゆき、呑まされた灼熱のかたちを思い知った内腿がびくびくと波うった。
 痛みを覚えるほど締めつける内を自身で容赦なくかき回す。
 小柄な獲物をいいように暴く合間、男は知らず目を眇める。
 喘ぎは高く切なくなっていくのに、戒めぬ拳は固いままだ。
 刺激を欲してゆらぐ下肢も、はしたなく雫をこぼす昂ぶりも、気づかぬように慰めようとはしない。
 角度のきつい欲の、精を遂げる快美ならもうじっくり教えてやった。それでも。
「や、め、ア、嫌、だ…っ…!…」
 ぱさぱさと頭が左右に振られた。
 すでに幾度も打ちこまれた内部は蕩けながら、なお未通のきつさを保つ。
 そのかたくなさ。
 継ぐ血を拒む様と重なれば、嗜虐心はとめどない。
 細い首に歯をあてながら、最も深い場所に欲望を注ぎこんだ。

 戦いの勝者がリングを手にする。
 明快なルールに異議を唱えたのは、執着するべき頂の者だった。

「ならその人が継げば良いだろ!?」
 己に理があることを信じる、愚直な主張。

「俺はなりたかったことなんて一度も無いんだ!」
 ザンザスが己に膝折ることを望み、果たせぬ相手に言い募る。
 覚えた激情にまかせて攫った。力で暴いた。あの瞬間に許せはしなかった。
 己以外の十代目候補ではなく―――沢田綱吉が。

 汚れていない幼子の手で、陽のあたる玉座の足元で、お前とお前の固執するものに一片の価値も無いのだと向ける指。
 暗黒界の頂点であることに、陽のあたるとは皮肉な話だ。
 
「ひゃ、ぁ、んっ!!」
 うってかわった性急さで昂ぶりを扱かれ、稚い欲がたまらず吐き出す。
 崩れる身のうちから抜けても、男は残らず搾りとるような指の動きを止めなかった。尚ものたうった躯が失墜し、弛緩した。
「――――ぁ…」
 絶え絶えの息のもと、唇が震える。
 涙に濡れた睫毛を瞬かせ、綱吉の瞳が焦点を合わせる。
 言葉が出ると思うのに継質を使うまでもなかった。
 指で頤を上げさせる。細い息が何度か。音が乗るまで待ってやった。まるで言い分を聞く気があるみたいに。

「あんたたちみたいのに関わるの、」
 足の間のザンザスを仰いで、綱吉が囁く。
 彼が云うと困惑に苦笑うような響きがある。ここまでされて殺意も抱けない弱く無力な人種が、高い壁の上から関わりさえ否定する。

「―――本当に、迷惑なんだよ」

 日なたから出てこない。良いだろう。
 男は口端に笑みと似たものを刷いて、相容れない唇を塞いだ。



 お前のことは認めない。




                                                 end.






     明暗、要不要、清濁、敵同士裏表並び。