標的187 

 @(何本書くつもり!)

 日本は好きだ。文化も極みだ。
 が、憧ればかりで本物は知らない。実のところ。
 そわそわしながらお茶を注いだ。三度目だった。葉っぱも三種目。
 スパナが集めた日本茶コレクションは、正当なる日本人の気に入るだろうか。勝負どころだ――そう思うと淹れた端からやっぱりあっちという気になるおかげで。
 とは言ってもその相手はまだ目を覚まさないでいた。
 昏倒しているボンゴレ十代目は、スパナ愛用せんべい布団に寝かせてやっている。早く目覚めて品評を交わして欲しかった。
 日本の技術者となら友誼を得たことがあるが、機械の話しかしなかった。
 そういえば入江もそのクチだ。もったいない。
 でもあのヒトどっちにしろ西洋かぶれ…いやアメリカナイズされてるんだよね――スパナは司令室で飲んだ泥みたいなコーヒーを思い描く。うっとなった。
 口直しならぬ味覚直しにカップをあおってしまったので、四度目のお茶を用意した。布団の方で、ん、と微かな声がする。
 しゃがんで覗きこんでみた、目はまだ閉じられたままだった。けれども香気に触れた小さな鼻が、小動物みたいにひくり、と動く。
 あどけないといって良い顔。たしかに若返っているボンゴレ十代目、過去から来た迷子の少年が、小さな口を動かした。
「…………ん」
  ―――かあさん。
 舌ったらずに洩らした、目尻に光る雫を見る。
 空いている手でそれを拭った。百℃の湯よりも熱く感じた。

 この茶葉で正解だ。


  (瞼に浮かぶ面影の奈々)(可愛すぎ)(親子で)